転職活動の面接で必ず聞かれる退職理由。多くの方が退職理由をどう伝えればいいか悩んでいます。世の中に溢れている、転職面接対策を見ると「これは伝えてはいけない」「この退職理由はNG」など、あたかも退職理由は本音を伝えてはいけないものとされています。本当にそれでいいのでしょうか?転職活動における退職理由で悩んでいる方や、今まさに仕事を辞めようかどうかを悩んでいる方に知ってもらいたいことがあります。
- 面接で聞かれる退職理由を、どう伝えればいいか悩んでいる。
- 今の仕事を続けるか、仕事を辞めて転職するかどうかを悩んでいる。
- 転職をしたけどすぐに転職しようと考えている。次は失敗したくない。
01 退職理由の本音と建前の違い
退職理由には本音と建前があります。本音とは「嘘偽りのない本当の気持ち」です。一方、建前とは本音の対義語であり「本心を隠して遠回しに気持ちを伝える」ことです。ここで気づいて欲しい点は、建前は嘘ではないということです。つまり、退職理由で重要なことは「建前を相手にどのようにして伝えるか?」ということです。
退職理由の本音ランキング
大手転職サイト「リクナビNEXT」の退職理由本音ランキングでは、上位5位は以下の通りです。他の会社のランキングでは、給与面への不満が上位になっているところが多いです。
- 上司・経営者の仕事の仕方が気に入らなかった(23%)
- 労働時間・環境が不満だった(14%)
- 同僚・先輩・後輩とうまくいかなかった(12%)
- 給与が低かった(12%)
- 仕事内容が面白くなかった(9%)
注目するべきところは3割の人が「人間関係の悩み」で退職を選択していることです。半径5メートルの法則という言葉をご存じでしょうか?半径5メートルの法則とは、人は生活環境の半径5メートル以内ですべての人間関係を構築しているという考えです。また、著書「嫌われる勇気」で有名なアドラー心理学でも、人間の悩みは、すべて対人関係の悩みであるとされています。人間関係の悩みは絶えることはなく、将来を誓った夫婦ですら離婚を選択する方が多いです。日本の夫婦の離婚率は約35%前後。つまり、人間関係の悩みは新しい会社でも起こりうる可能性の方が高いということです。従って、退職理由は「不満」ではなく「叶えたいこと」を全面に出すことが重要なのです。
退職理由の伝え方
退職理由の伝え方について、本音で伝えることはお勧めしません。建前で伝えることをお勧めします。何故なら、多くの人は無意識に「本音=不満」と認識しているからです。退職する理由は、人それぞれではありますが「不満だから辞めるのではなく、叶えたいことがあるから辞める」のです。この違いに気づきましょう。そこからスタートです。
人間関係の悩みで辞める場合
結論から言うと人間関係の悩みで辞める場合は「本音NG」です。何故なら人間関係で辞める人は、同じ理由で辞める可能性が限りなく高いからです。面接官も同じ判断を下します。わざわざ自分から「面接の評価を下げるリスクを負う」必要はありません。上司や社長からのセクハラやパワハラが原因で止むなく辞めたという方も、面接では本音を伝えることはお勧めしません。
私も社長からのパワハラに耐え切れずに辞めた経験があるのでわかりますが、面接官は根掘り葉掘り聞いてきます。そのうえで「それってあなたに原因があるんじゃないの?」とか「それのどこがパワハラ?」などと平気で言ってくる面接官がいます。特に、社長など元々ワンマンの気質が高い人は、その人自身がハラスメントをしている可能性が高いので、そうした退職理由を口にする応募者を採用することはありません。というかそういう面接官がいる会社に入社してはいけません。では、どうすればいいのか?
退職理由が上司・経営者などにある場合、その原因は「指示の方法」であったり「注意や叱責」など様々でしょうが、要するに「上司・社長と接点があるから駄目」なんです。つまり、可能な限り接点をなくさなくてはなりません。そこで退職理由としての建前は「自分の裁量で動ける環境」になります。しかし、組織に属する以上はこの自分の裁量で動ける環境は、厳密にいえばありません。そこは注意が必要です。
次に退職理由が同僚などにある場合、その原因は「いじめ」であったり「無視」など様々でしょうが、要するに「仲が悪いから駄目」なんです。つまり、可能な限り仲の良いチームに入らなくてはなりません。そこで退職理由としての建前は「チームワークを重要視している環境」になります。しかし、人が3人集まれば派閥がでいると言われるように、チームワークが良くストレスを感じることがない環境は、厳密にいえばありません。そこは注意が必要です。
人間関係の悩みで辞める場合は、本音を伝えては不利になる。建前をブラッシュアップする必要がある。
人間関係でストレスを感じることがない、ノーストレスの職場は世の中に存在しません。可能な限りストレスが少ない職場を選択すること。そして、ストレスを処理する能力を身につけることが何より重要です。一つだけ確かなことが「他人に期待してはいけない」ことです。期待していると裏切られたときにショックが大きくなります。
労働環境の悩みで辞める場合
結論から言うと労働環境の悩みで辞める場合は「本音はケースバイケース」です。例えば「残業や休日出勤が多くて辛い」と面接官に伝えた場合、面接官は同情はするかも知れませんが、評価には繋がりません。残業や休日出勤が多いから「何をしたか?」が重要になってくるのです。要するに、自分でコントロールが可能な領域があるとみなされる理由は「本音NG」となります。一方、人不足などが原因で上司から「指示・命令」があり、残業や休日出勤が多いのであれば、コントロールが不可能な領域なので「本音でもOK」となります。但し、本音にしろ建前にしろ伝え方は重要です。では、どうすればいいのか?
退職理由が労働環境にある場合、その原因は「自分に責任がある場合」と「自分に責任がない場合」がありますが、面接では伝え方を間違えると評価は下がります。何故なら多くの企業では、残量が無い・休日出勤が無いとは100%約束できないからです。例えば、クレームやトラブルが発生した場合は、残業が発生する可能性が高いでしょうし、場合によっては休日出勤がある可能性もあるでしょう。
面接官の立場に立って物事を考えればわかりますが、そうした不測の事態が発生したときに「残業を嫌がる・休日出勤できない」と思う人を採用するでしょうか?多くの面接官の答えはNOではないでしょうか。つまり、ストレートに本音を伝えるのはリスクが高いのです。そこで退職理由としての建前は「生活にメリハリをつけて、空き時間で知識を習得したり見分を広めたい」になります。注意する点は、理由と返答が矛盾しないようにしましょう。
労働環境の悩みで辞める場合は、何をしてきて、今後はどうしたいのかを具体的に伝えることが重要。
面接官の立場に立って物事を考えることで、退職理由をどう伝えれば良いかがわかるようになります。要するに、一緒に働きたいかどうか。人間関係や労働環境に不満や批判を行うと一緒に働きたいと思う人は、あまりいません。何故なら、不満や批判はネガティブな感情であり、面接という公式な場でそうしたネガティブな発言を平気でする人は、少しでも気に入らないことがあれば陰で同じような言動や態度を繰り返すからです。それはつまり「組織に悪影響を与える人」であるということです。
02 応募書類・面接で使える退職理由サンプル
退職理由は、あなたが次の職場で叶えたいことを伝えるようにしましょう。転職は縁と昔からいわれています。企業が求める人材とあなたが求める条件がマッチしていれば良いだけです。つまり「あなたが求める条件を退職理由の中に伝えたいメッセージとして込める」ことが重要です。
人間関係のストレスから解放されたい
あなたが感じる人間関係のストレスの要因は何でしょうか。ストレスとなる要因がどのようにして解消されれば、あなたは活躍できるのでしょうか?ゴールイメージを頭に思い描いてください。それがあなたが叶えたいことです。
自分を成長させてくれる人と働きたい
この場合は、あなたに成長の機会を与えてくれる人が必要です。つまり、チャレンジできる環境。しかし、あなたには努力する義務が発生します。あなたが目標を達成させるために努力できる才能があるのであれば、進む道は間違えていないと思います。逆に、努力できないのであれば進む道を変更しましょう。仕事は学校と違って成果を出して、その対価として給与を貰う場所です。以下、サンプルです。
退職理由は、チャレンジできる環境で働きたいと考えたためです。現職では、裁量ある仕事をしておりましたがルーチン業務に限った話しでした。御社は〇〇に力を入れているので、新しいチャレンジができるのではないかと思い、転職を決意いたしました。
自分に仕事を任せてくれる人と働きたい
この場合は、あなたに権限を委譲してくれる人が必要です。つまり、裁量権が大きい環境。しかし、裁量があるということは自由にできる範囲が大きい反面、責任がのしかかってきます。あなたに責任感があり、やり遂げる力があるのであれば、進む道は間違えていないと思います。逆に、責任感はなくすぐに投げ出すのであれば進む道を変更しましょう。決められたことを決められた通りに行う道を選ぶのも手だと思います。以下、サンプルです。
退職理由は、裁量権が大きい環境で働きたいと考えたためです。現職では、小さな案件も全て上司からの指示や承認を受けなくてはいけない環境でした。御社は〇〇に力を入れているので、スピード感を持って仕事ができるのではないかと思い、転職を決意いたしました。
楽しく和気あいあいとした人と働きたい
この場合の多くは、あなたと価値観が近い人が必要です。つまり、同世代が多い環境。しかし、組織は幅広い年代の人たちで構築されています。あなたにも自らコミュニケーションをとりにいく心構えは必要です。また、人が3人以上いれば派閥は発生するものです。ストレスが完全にゼロになることはないので、注意しましょう。
退職理由は、同じ方向を向いてチームとして仕事をしたいと考えたためです。現職では、個人プレーが多くチームとしてまとまっていない環境でした。御社は〇〇に力を入れているので、同じ志を持った方達とチームとして大きな仕事ができるのではないかと思い、転職を決意いたしました。
優しく応援してくれる人と働きたい
この場合は、あなたが仕事ができるようになる必要があります。仕事ができるようになれば、優しくしてくれますし、応援もしてくれます。しかし、仕事ができないことを周りのせいにしてしまう他責の念を持っている人を、誰も応援してくれません。応援してくれる人がいるのであれば、それは同質の人たちです。表面上は良くても、陰では不平不満を吹聴している人たちです。つまり、自分で自分の道を切り開く力を身につける必要があります。
退職理由は、チームメンバーお互いが支えあえる環境で仕事をしたいと考えたためです。現職では、個人プレーが多くチームとしてまとまっていない環境でした。御社は〇〇に力を入れているので、チームメンバー同士が支えあって仕事ができるのではないかと思い、転職を決意いたしました。
労働環境の悩みから解放されたい
あなたを悩ませている労働環境の要因は何でしょうか。その悩みとなる要因がどのようにして解消されれば、あなたは活躍できるのでしょうか?ゴールイメージを頭に思い描いてください。それがあなたが叶えたいことです。
残業がなく定時で帰れる職場で働きたい
前提として、残業がない企業を探しましょう。募集要項や社員の口コミなどを調査すればある程度は見えてきます。給与体系に見込み残業が含まれている場合は、高い確率で残業が発生する職場です。そのうえで、定時で帰った後に何をしたいのか?プライベートを充実させたいのであれば、メリハリをつけて仕事をしたい。空き時間に自己啓発をしたいのであれば、スキルアップをしたい。など、どうなりたいのかを考えましょう。
退職理由は、メリハリをつけて仕事を行い、空いた時間にスキルアップをしたいと考えたためです。現職では、人数不足から残量が多く空いた時間が取れない環境でした。御社は〇〇に力を入れているので、メリハリをつけて仕事に集中し空いた時間でスキルアップを実現できると思い、転職を決意いたしました。
年間休日数が多い職場で働きたい
先ほどと同じように、年間休日数が多い企業を探しましょう。ただし、労働環境の良さ・悪さは、複数の要因が絡んできます。年間休日数が多いけど、残業が多い。年間休日数は少ないけど、残業はゼロ。など、何を優先したいのかを明確にしましょう。理想の職場と出会える確率は奇跡です。また、労働環境がホワイトであればあるほど、ライバルの数は増えます。そのライバル達より優位に立たなくてはいけません。転職活動は競争ですので注意しましょう。
退職理由は、ワークライフバランスが整った環境で仕事をしたいと考えたためです。現職では、残業や休日出勤などが多く長期的には働きづらい環境でした。御社は〇〇に力を入れているので、長期に渡って仕事ができるのではないかと思い、転職を決意いたしました。
給与面の苦しみから解放されたい
給与面の苦しみから解放されたいのであれば、市場価値を高めるしかありません。多くの社会人は、自分の市場価値を知らずに身の程を知らない給与を求めてしまいがちです。給与は成果に対する対価です。ただし、職種ごとに給与相場というものがあります。その給与相場より明らかに低いのであれば、転職活動をお勧めします。そうでないのであれば、まずは自分のスキルアップや成果を出すことに注力してみてはいかがでしょうか。
今より給与がもらえる企業で働きたい
日本の多くの企業では、役職や職種で給与は決まります。外資系など成果主義の企業は、その給与の幅は広くなります。そのうえで、あなたが望む額とあなたの経験・スキルがマッチしているのかどうかを考えてみましょう。中途の面接では、現職年収や希望年収を聞かれます。何故なら、予算というものがあるからです。その予算内に収まっており、尚且つ、あなたの経験・スキルに再現性が高く評価されれば、企業はあなたを欲しがるでしょう。つまり、退職理由でアピールするのではなく、経験・スキルで企業に貢献できることをアピールしましょう。
退職理由は、人事評価制度がきちんと整った環境で働きたいと考えたためです。現職では、公平に従業員を評価する仕組みが整っていない環境でした。御社は〇〇に力を入れているので、従業員を大切にしており、出した成果を公平に評価していただけると思い、転職を決意いたしました。
面白くない仕事から解放されたい
あなたが今、面白くないと感じている原因は何でしょうか。逆に、あなたが思い描く面白い仕事とは何でしょうか。100人いれば100通りの面白さがあります。楽しさや面白さを求めている人もいれば、人や社会のためになるやりがいを求めている人もいます。また、楽をしたいだけの人もいます。あなたがのゴールイメージを頭に思い描いてください。それがあなたが叶えたいことです。
楽しい・面白い仕事をしたい
この場合は、あなたがやりたい仕事ができる環境が必要です。つまり、やりたいことができる環境。職種なのか、仕事の進め方なのか人それぞれ違ってくると思いますが、あなたのやりたいことができる企業を探さなくてはなりません。一般的には、職種で求人応募がかかるので自然と職種になってくるでしょう。しかし、同じ職種でも企業によって仕事の幅や進め方は違ってきます。アンマッチが起こらないように、面接などで確認しておく必要があります。
退職理由は、今まで培ってきた〇〇の経験や知識をもっと活かしたいと考えたためです。現職では、△△に従事しておりますが、将来を考えた際にこのままではいけないと感じました。御社の募集要項を拝見した際に〇〇という仕事内容は、私が今まで培ってきた〇〇が活かせると思い志望いたしました。
やりがいのある仕事をしたい
この場合は、あなたのやりがいを感じる仕事ができる環境が必要です。業界なのか、職種なのか人それぞれ違ってくると思いますが、あなたが何に対してやりがいを感じるのか?それを自分自身で明確にしておきましょう。そうしないとアンマッチが起こり「こんなはずではなかった」と後悔する日が来るかも知れません。また、企業によって考え方が全く異なるので、先ほどと同じように、面接などで確認しておく必要があります。
退職理由は、裁量権が大きい環境で働きたいと考えたためです。現職では、小さな案件も全て上司からの指示や承認を受けなくてはいけない環境でした。御社は〇〇に力を入れているので、スピード感を持って仕事ができるのではないかと思い、転職を決意いたしました。
03 退職理由は目標へ進む勇気ある決断
転職活動において、退職理由は不満ではありません。叶えることができないことを叶えるために、あなたが目標へ進むために必要なものです。転職活動は、あなたにとって目標を達成させるために、必要なものを満たす可能性がある企業を探さなくてはなりません。つまり「御社なら私が叶えたいことを叶えられる可能性が高いため入社したい」という志望動機に変換されるのです。
まとめ
転職活動は、企業が応募者を選定する場でもあり、応募者が企業を選定する場でもあります。つまり、お互いが対等な立場です。しかし、企業は何十人、何百二人の中から数名を選定しています。あなただけではないということです。従って、退職理由を不満と捉えていてはライバルに勝つことはできません。伝え方をブラッシュアップして、退職理由を志望動機として伝えられるようにしましょう。
- 退職理由の建前は嘘ではなく、本心を隠して遠回しに気持ちを伝えること。
- 伝え方次第で感じる印象は大きく変わる。ポジティブに変換することが重要。
- 退職理由=叶えたいこと。この真実に気づくかどうかで今後の仕事が変わる。
- 叶えたいこと=志望動機。この繋がりを切ることなく目標へ進むことが必要。
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